梵天丸様爽やかに御起床される




 あ…ありのまま 今 起こったことを話すぜ!

 『俺はダチの家で飲んだくれて三十路を嘆いていたと思ったらいつのまにか若返っていた』

 な…何を言ってるのか わからねーと思うが
 俺も何をされたのかわからなかった…
 頭がどうにかなりそうだった…
 催眠術だとか白昼夢だとか
 そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ

 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…


 「つーか、げんざいしんこうけいであじわってますが、なにか」


 うはwwwwwショタヴォイスktkrwwwww

 とかネタに走ってる場合じゃなかった。
 一体なんでまたこんなことになったのか皆目検討がつかん。
 俺のCV若本的な美声はどこに消えたんだ。
 もしかして孔明の罠か?
 
 もみじのおてて、お布団ふかふか、だだっ広い和室にぽつんと一人。

 おかしい。おかしいぞ。
 俺が最後に覚えている状況とあまりにもかけ離れすぎている。
 大体一緒にいた小林はどうしたんだ。
 酒飲みつつゲームやってる俺の後ろでニコニコ動画見て吹いてたのに。

 ごつごつおてて、お布団せんべい、せまっくるしいワンルームに悪友とぎゅうぎゅう二人。

 本来ならこうあるべきだろう。

 「ハッ!これはもしや噂の某国による拉致事件!!ついに俺も拉致被害者の仲間入りに!?」

 いや冗談だが。
 人間を若返らせるような技術があったら将軍様の国は今頃世界に君臨してるし。

 にしても本当にわけ分からん。
 鏡がないから見て確かめることはできないが、なんだか物凄く小さくなってないか。
 子供っていうかこれってもう幼児レベル?
 この場合乳児じゃなかったのを喜ぶべきなのか俺は。

 ぷくぷくになってしまった手をじっと見つめる。

 ふむ。


   パァンッ!!


 ………おおいてぇ。痛いから夢じゃねぇわ。
 ひっぱたいた頬っぺたも手のひらもジンジンする。

 とするとこれは巷で噂の逆行ってやつ?
 でも幼児期にこんなところで寝起きするような身分じゃございませんぜ。
 畳なんか青々してるし、あの床柱の見事さを見ろ。料亭どころか旅館並みだ。
 あんがい転生とかかもしれん。そしたら死因は急性アルコール中毒とか? 
 ゴメンネ小林。死体と自宅の有害図書の処理よろしくね。

 あっ!車に同人誌積みっぱなしだ!!


 積荷を……積荷を燃やして……!!!


 「…………よし、寝るか!!」


 目が覚めたら元に戻っているかもしれん。
 もうなんでもいいから一刻も早くアレらを処分しなくては死んでも死に切れんからな。
 プラモとガレキはいいとしてフィギアはヤバイ。
 あれを親に見られるくらいなら今すぐ全裸で外に出たほうがマシ。ガチで。


 「おはようございます梵天丸様」

 声の直後に静かに空いた障子。
 平伏した着物の男。

 どうあっても俺を寝かせない気のようだ。

 
 ……クールになれ俺。
 一連の流れをよく読むんだ。

 まずこの着物の男。
 俺のことを何をとち狂ったか梵天丸とか呼びやがった。

 『独眼流政宗』を全話一気鑑賞した俺は知っている。梵天丸は伊達政宗の幼名だ。
 偉人の名前を子供につけた可能性はあるが、こんな名前そうは使わない。
 そのうえ様付けされた。
 俺をそう呼んだ男は十代前半てとこだ。幼児相手に普通じゃねえ。
 障子を開けて呼びかけてきた男の向こう側に、ビルも電柱も建物も一切ない。電線さえ見えん。
 どこだここは。日本じゃまずありえんぞ。

 さあ俺!クールに行くんだ。
 まずは挨拶から!!

 「お、おはよう。ちょっとききたいことがあるんだが」

 とりあえずアンタ誰?

 「ご報告が遅くなりまして申し訳ございません。本日からは姉に代わって私がお傍に控えさせていただきます」

 ひかえおろう。
 一瞬脳内が黄門様モードになった。

 「あね?」

 「はい。梵天丸様の乳母喜多……いえ、政岡の異父弟にございます」

 き、聞いたことがある名前ですじょ?
 うろ覚えのテレビとか時代小説とかあのゲームとかこのゲームとか……。

 「殿の徒小姓をお勤めいたしておりましたが、此度梵天丸様の守役を兼ねさせていただくこととあいなり……」

 ………。


   ( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \


 「片倉景綱かよ!!!」


 「は。小十郎とお呼びください」

 転生じゃなくてタイムスリップ?
 コレが戦国時代ならば、畳を全面に敷いた部屋はよほど身分が高くなきゃ使えない。畳自体が高級品だからな。
 それを踏まえてオレが寝てるこの部屋が畳敷きってのは……。
 こいつが本当のこと言ってるのか、それとも金のかかった冗談か。
 冗談にしては俺の体がありえない。
 
 ならば本気で伊達政宗……ほ、保留だ保留!

 嘘かホントかは後で考える。
 まずこれを聞いておかねば!
 
 「なあ、オレっていくつだったっけ?」

 「本年にて御年四つになられたかと。そろそろ素読を始められるお年頃でございますね」

 てことは万が一。
 万が一オレが本当に伊達政宗だったとしたら、この後病気で片目を失ったり母親に毒殺されかかったり弟を殺したりするわけ?
 そして選択の余地はなしと。
 強制骨肉の争いルート。


   人生オワタ\(^o^)/





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送