梵天丸様名案を思いつかれる



 秋です。農繁期です。
 城下はもとより城内もすごくバタバタしてます。
 まあ収穫だけじゃなくて冬支度なんかもしなきゃならないから忙しいんだろうね。
 面倒見てる子供たちも稲刈りだかなんだかの手伝いで毎日出払ってるし、ぶらぶら遊んでるのが申し訳ないよ。

 朝起きて四駆と散歩して朝飯食って勉強してぬこたんと戯れてお茶とお花習って昼飯食って勉強して遊んで四駆と散歩して夕飯食って遊んで風呂入って寝る。

 小学生だろ。小学生だよな。現代なら間違いなくニート。
 税金で暮らしてるのにこんな楽してていいんだろうか。
 昔は常々一生遊んで暮らしたいと思っていたが、小心者なので後ろめたくてしょうがない。
 
 この後ろめたさを誤魔化すために、遊んでないで農機具の普及でもしようと思います。農繁期だけに。

 まあこれは前々から考えてたことなんだ。
 具体的に言うと今年の春からな。

 だってこの辺の人たちって代掻きとか全部人力なんだぜ。
 鋤とか鍬とか持って日本昔話風に耕してるんだ。なんとも長閑な光景だよ。
 見てるオレはその効率の悪さに物凄く叫びたくなったけど。

 昔学校でちらりとやった三圃式だのノーフォークだのいう農法が伊達領の風土に合うかどうかは謎だが、作業面でのことなら工夫次第で格段に楽になると思うんだよ。
 いきなりガソリンとかコークスとか言わないから、せめて牛か馬を使って欲しいんだ。環境にだって優しいし。
 他所の土地では結構昔から使ってるみたいで、馬鋤や馬鍬の現物を手に入れるのは難しくないしな。
 にもかかわらずなんでこの辺にそういう農法が根付いてないのかさっぱりわからんが。
 
 とにかく、当面の目標は、目指せ耕地拡大、収穫量1,5倍。

 もちろん時間はかかるだろう。
 しかし必ず成果は出る。そう、オレは信じる。

 来年は試験運用、ゆくゆくは馬とセットでレンタルでも始めようか。黒脛巾の諜報活動のついでに宣伝してもらってさ。
 あ、地主とかに売り込んで試用してもらうのもいいな。アンケート用意しといて後々それを元に改良するとか。
 夏場のポンプの売上が予想以上によかったから資金に余裕があるし、元々土地は借りるか買うかするつもりだったんだ。
 農業は専門外だから一から耕作してみるのも今後のためにはいい経験だろう。


   うはwwゆめがひろがりんぐwwww⊂二二二( ^ω^)二⊃


 そうと決まれば、まずはブツを購入だ!出入りの商人に頼めばなんとかなるかな。
 あとは地元の職人に馬鋤の量産を委託して、馬を手に入れる算段をして、ミソを舐めて、土地の確保をして、労働力が必要だろうから人も雇って……。

 「……これは死ねる」

 手配の全部を一人でやるのは凄く大変。
 ていうか、こういう仕事はオレには向いていない。

 「小十郎ーっ小十郎ーっ!!」

 とりあえず近くにいると踏んで叫んだら、案の定庭の方から出てきた。
 呼んで出てくるところがすげーよ。

 「何用にございましょう」

 ううむ、ドラ○もんかランプの精のようだ。
 とりあえずオレのお願い事を聞いてくれるかな?

 「ちと聞きたいんだが、事務仕事とか交渉事に得意な人材に心当たりはないか」

 「私では……」

 「や、小十郎がそういうのできるのは分かってるよ。でもお前が一人で全部やるのは大変だろ」

 十代半ばの少年に何もかもやらせるのはちょっとな。今だってガキ共の面倒で手を借りてるし。
 まあ本来は言い出したオレがやるべきかもしれんが、ただでさえ金勘定とか苦手なのにこれ以上は無理。

 「なるべく話しやすくて、とりあえず能力より信用第一」

 「―――心当たりが、ないではありませんが」

 しばらく考えてからポツリと言った言葉が、妙に頼りない。
 なんだなんだ。珍しく歯切れが悪いじゃねーか。

 「なんぞ問題でもあるのかね」

 「いえ、能力も信用も問題ない相手です。今日にでも遠藤様から話を通していただきましょう」

 ああ、確かに遠藤さんから打診したほうがいいか。
 小十郎は頼りになるけど、正直伊達家じゃ身分が高いってわけでもないしな。
 年だって元服したばっかの小十郎よりずっと上だろうし。

 「いえ、そういうわけではなく、個人的に接触が躊躇われるというか」

 え、何か確執でもあんの。仲が悪いとか?

 「まあ私はどうでもよいのですが、あちらが気にしているかもしれませんので」

 へー。

 なんかよくわかんないけど、とりあえず信頼して財布と書類を任せられる相手ならなんでもいいよ。
 オレが知ってる相手っていうと父上の周りの爺様方か、もしくは職人とか商人とかだからな。
 身元とかはしっかりしてるんだろ?

 「それは私が保証いたします」

 うん、なら問題ない。
 まあその人がオレの頼みごとなんぞ受けてくれるかどうか分からんが、もし嫌がるようなら無理強いするなよ。
 あ、名前?OKもらったら佐助にでも言付けてくれ。ぬか喜びしたくないからな。



 って指示したのはオレなんですけど、これは予想GAY。



 「鬼庭綱元さんですか」

 数時間後、引き受けてくれた「心当たり」の人の名前を聞いて、呆然。

 すごいビックネームなんですが、mjsk

 えっと、たしか大河では村田なんとかって人がやってたような。いかりや長助が父親の鬼庭左月役でさ。
 そういや父親の方は知ってるけど、本人には会ったことがないな。
 今年で23か4だっけ?そらまた若いね。や、この時代ならそうでもないのか。

 「書と和歌に長けてお茶も嗜む将来有望な能吏、同年代でも飛びぬけた優秀さ、ねぇ」


 当たり前じゃん。
 将来の伊達三傑だよ………。


 え、これなんかマズくね?
 将来の伊達家を背負って立つ人材がみんなオレの周りにいるって、普通にヤバいと思うんですけど。
 オレの野望的な意味で。
 
 このままだと領主ルートに乗りそうな気がします。
 
 どうにかしてフラグをへし折らないと! 
 でも頼んだ直後に断るのは絶対おかしいよな。小十郎とかに探りを入れられそうだ。
 実際に手が足りないうえ、綱元断って別の人っていうのはなんか申し訳ないし。
 手を借りざるを得ないこの状況。
 だったらせめてアイツらと弟との繋がりを深めたいところなんだけど……。

 「……そうだ!」

 竺丸を引き込めばいいんだ!!

 うわ、オレって天才じゃね?

 今のうちから竺丸と仲良くして、三傑との間を取り持つ。
 そうすれば将来竺丸が家を継いだ時にはばっちり奴らがバックアップしてくれて、伊達家は安泰オレの老後も安定。
 しかも竺丸は数えで四つ、三歳児だ。
 三つ子の魂百までなんて言葉もあるし、今のうちから仲良くしとけば隠居後も面倒見てくれるはず!

 完璧だな!なんという素晴らしいプラン!

 「佐助、早速挨拶に行くぞ!綱元はどこにいる!?」
 
 馬を引けぇい!と言わんばかりに立ち上がってポーズを取る。
 今すぐ行ってご挨拶したらその足で竺丸のところに遊びにいっちゃうよ!
 え、母上?スルースルー!

 見よ、オレのフラグクラッシャーっぷりを!圧倒的じゃないか! 

 え、何か見落としがある?
 まっさかぁ。そんなはずないじゃないか。
 最近すっかり子供の扱いにも慣れたし、きっと竺丸とも仲良くなれるはずさ!


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