梵天丸様無闇に計画を御立てになる



 「梵天丸様、黒脛巾組が参りました」
 
 「とおせ」

 通せとは行ったものの、実際に連中が部屋に入ってくることはない。
 いや、俺はいいって言ったんだけど奴らがヤだっていうんだもん。
 最初は庭先で膝ついてたんだから、廊下に上がるようになっただけなんぼかマシだけどさぁ。
 正直遠くて声がよく聞こえないんだからもっと近づけよ。

 「検地につきましてはご指示のあった『と・十八』地域までを済ませましてございます。報告はこちらに」

 「うん」 
 
 ……… やっぱし _| ̄|○

 おかしいよ!なんで伊達政宗がまだ5歳なのに領地がこんなに広いのさ!?
 一体どんな荒業を使ったんだねパパン……。
 アレかな、パラレルワールドって奴。
 領地が海に接してるのはすごくありがたいが、この状況じゃオレの知ってる史実なんかあてになんないかもしれん。
 一応後で小十郎に色々聞いておかねばならんな。

 「先日御下命いただきました河川に関しましては別途調査を進め……」

 「そろそろふゆだし、むりはするなよ」

 「はっ!有難き幸せ!!」

 なんだか妙に有難がって去っていく青年。
 人が入れ替わり立ち代りするんで目印付けろよとか言ったら黒い脚絆を付けるようになった。
 黒い脚絆付けてるから黒脛巾組なんだってよ。
 誰が言い出したんだか知らないけど『くろはばきぐみ』って言いにくくない?クックル先生とかじゃだめなの?

 てゆーか。


 なんでオレこんなことしてんの?


 「それは梵天丸様がお命じになられたからでは」

 ええぇいシャラップ!!おだまり!!
 小十郎の小姑!

 「しゃらっぷ?」

 黙れってことだよ。

 まあね、確かにオレが言いだしたことですよ?
 ごほんよみたいですぅとか、まつりごとのおべんきょうをしたぁいとか、痛々しいまでに子供になりきっておねだりしましたとも。
 
 だって戦国時代で斬り合いとか怖いじゃん、オレって基本的に平和主義だし。
 まあせっかく近代戦の知識があるんだから軍の原型くらいは作るけど、戦が起きる前にさっさと弟に家督を譲るのがベストだと思うのよ。
 だからそれまでにできることはやっといて、隠居後は豊かな国でニートとなって優雅に暮らすのだ。働いたら負けな生活万歳。
 出家して寺に入るよりゃ野に下って美人の嫁さんとかもらっちゃって、時代の波に乗って妾の一人も囲っちゃったりとか。

 うはwwwオレの時代ktkrwwwww

 まあ妄想はちょっと置いといて、そのために治水や灌漑に力入れたり新田開発の計画立てたりしてインフラ整備に努めようとしてるのですよ。
 測量や人口調査もその布石だもんね。金かかるから着工は数年先だけどさ。

 ………でも。


 「オレ、まだよっつなんだぜ」

 なんだか知らんが輝宗公……父上はオレをかなり高く買ってるんだよな。そんな期待されても困るって。
 さすがに直接政治に関わらせたりはしないけど、しょっちゅう相談されたりとかマジ勘弁。
 歴史には自信があるけどオレの得意分野は近代史なんだよ……。

 「精神年齢とやらは小十郎の倍以上と仰られたではございませんか」

 くっそーコイツに全部ぶちまけたのは失敗だったかな。
 
 でも試しにちょっと話したらあっさり信じるからつい。
 なんで驚かないのか聞いたら『見れば判ります』とか言うし。
 判るんですってよ。ちょっと違ってるなってのが。

 恐るべし神職の息子。
 その第六感には敬意を表するから何もない壁を凝視したりとか、庭を歩いてる時にいもしない何かを避けるような仕草するの止めてください。
 こわいから。すごくこわいから。
 何か見えてるの?ねえ何が見えてるの?

 「竺丸様に家督をお譲りする云々はともかく、読み書きのほうも随分御上達なされたそうで」

 「まーね。めがみえなくなるまえに、おぼえておきたかったから」

 片目で文字読むのって大変そうだし。
 酷使し続けたらどんどん視力落ちそうだ。こえーこえー。

 「……疱瘡でございましたか。避けることは出来ぬのでしょうか」

 「むり。どーいうきっかけでかかるのかまでは、しらないからな」

 避けられるもんなら最初からなんとかしとるわい。
 片方目が見えないと距離感がつかめなくなるんだぞ。車の運転が出来なくなる。

 「さようですか」

 さようです。
 ちょっと、暗い顔すんのやめてよ。別に小十郎が失明するわけじゃないじゃん。

 そんなことよりオセロしようぜ!

 じゃなかった、例のブツがどうなったか教えてくれ。

 「どれのことでございましょう」

 「えっとー、ざぶとんとか」

 マジ驚いたんだけど、戦国時代って座布団が一般的じゃなかったのな。
 日本昔話に出てくる藁で編んだ丸い奴が置いてあるのに愕然とした。腰が冷えちゃうじゃないか。
 なんで妙に畳が普及してるのにそういうところだけ史実どおりなんだ。

 「姉が縫いましたが未だ綿が入っておりません。新しい綿が未だ手に入らず……」

 「ああそうか、ざいりょう……」

 「私の布団の中綿でよろしければすぐに解かせていただきますが」

 「いやいやいやいや、そこまでせんでいい」

 そっかー今は綿って高級品なんだ。
 外国から輸入してんのか。違う?ふむ。上方のほうからね。
 木綿はこの辺じゃ栽培できない……気温が原因かな。
 アメリカの南北戦争の頃とか、綿花は南部で作ってたっけ。
 
 「……うーん、かいこかな」

 まだまだ先の話だろうが養蚕を奨励するのはいいかもしれない。
 街道整備して流通させてさ。繊維関係一手に処理できればなおいいわな。
 女性の雇用が促進できそうだ。『ああ野麦峠』は絶対やらせんけど。

 「ううううあたまがこんらんしてきた」

 「書き留められればよろしいでしょう」
 
 紙がもったいない。
 あ、紙漉きも産業になるじゃん。綺麗な川があるし。

 製紙業と養蚕業。紙と生糸の流通でぼろ儲け。
 だがその前にインフラ整備して灌漑設備を整えて余剰生産増やさないと。
 テレビで見た合鴨農法ってもう始まってたっけ。鴨肉食えるしいいよなアレ。
 日本って基本的に獣肉食わない文化だから、酪農による牛乳の摂取と魚鳥の消費を増やすことで栄養状態を改善せねば。
 灌漑といえば水車使えないかな。ガレキで鍛えた腕前で模型作ってみようか。

 やりたいことが多すぎる。
 何から手を付けたらいいんだ……助けてドラえもーん!!

 「梵天丸様、またしてもお悩みに……そうそうコタツについてはほぼご希望通りに改良ができましたゆえ、後ほどご用意いたします。そろそろ寒くなってまいりましたから」

 そりゃありがたい。
 東北の冬は寒いだろうなぁ。
 ……隙間風の入る日本の民家で、頼りになるのはおコタと火鉢だけか。
 おコタの布団はオレの掛け布団流用するとして、座布団はもう後ででいいや。
 夜は明かりもろくにないから早く行灯も作らんと。間接照明のほうが目に優しいはず。

 さむけりゃヒーター、熱けりゃエアコン。
 そんなふうに考えていた時期が、オレにもありました。

 今じゃすっかり省エネ生活です………orz


 
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