梵天丸様新しい家来を得られる子供ってなんでこううろちょろ動き回るの。 「ぼんてんまゆさま!あっちのいけにいこう、ましょう!!」 今日は父上に言われて従兄弟の時宗丸と過ごしてるんだが、コイツがまた阿呆みたいに元気がいい。 年はオレよりも一つ下だそうだから、数えで四つ。満年齢なら3歳か。 幼稚園児と同じ年齢なんだからそれにしちゃしっかりしてると思う。 でも力の加減を知らないよね。 あーもーまた腕をぐいぐい引っ張るしぃー。 「……『る』が言えないなら、しょうりゃくしてもいいから。あと、ごびがおかしい」 「しょ?ご?」 省略と語尾が分かりませんか。 「むずかしいことばは、言わなくてもいいってことだ」 「ぼんさま!いけ!!」 ちょwww省略しすぎwwww 「こどもだしなぁ……」 なんとなく昭和初期の子供っぽい感じ。 子供は風の子ですよ! 「いけだよ、ぼんさま!こっち!!」 ただちょっと元気過ぎるのが問題。 オレはインドア派なんです。すみません引き篭らせてください。 「ぼんさまぁぁあああ!!」 「わかった!わかったからちょっとまっ………」 バッシャァアアアン!!! あああああああqwsでrftgyふじこlp;@: 見事に池にダイビングしました。 「ごめんなさい……」 「あーべつにいいって」 落ちた瞬間は焦ったけど、どうせ泳げるし。池だってそう深くもないし。 ただちょっと大量に泳いでた亀が怖かったけどな。餌と間違って群がってくんだもん。 昔長野に出張した時、善光寺に立ち寄ったことがあったんだが、あそこの堀にいた無数の亀を思い出して背筋が寒くなった。 まあ鯉がいなかったのを幸いと思うべきだろうな。 あの咬合力で吸い付かれたら指の一本か二本は持ってかれてたかもしれん。ブルブル。 「冬になるまえでよかったよ」 氷もまだ張ってないし、水温もそんなに低くなかった。 むしろ出た後のほうが寒いので早く着替えたいです。 うっ。袖の中から水草が出てきた。 「でも、お、おれがっ、ぼん、さまを、おと、おとしっ」 ヤバイ泣く。これは泣く。 この声の震え方は泣き出す前兆だ!間違いない! どうしたらいいんだ!? 教えておじいさん!!教えてアルムの森の木よぉぉおおお!!! 「なくなぁ――――っ!!」 「うぇ……」 よし、泣き止め! 「かきゅうてきすみやかに、小十郎をよんでこい。ほかの大人にしられないようにだ」 「う、は、はい」 よし、うやむやのうちに誤魔化そう! 何かしてればそのうち泣くのを忘れるだろ。 それに一応オレってここの嫡男なわけだし、目玉もまだあるから間違いなく跡継ぎだと思われてる。 池に突き落としたのが知られたらガキとはいえコイツの立場も悪化するだろ。 「きがえとてぬぐいをもってくるようにも、つたえてくれ」 「わかった!です!!」 よし行け!そして着替えを持ってこい! なんだか寒くなってきたから急げよ!! 「こういうことでしたか」 うむ。こういうことなのだよ明智く……小十郎。 頼むから眉間に皺を作るのは止めろ。顔が怖い。 「で、他の者には知られたくないと」 「いえす、ざっつらいと!」 親指を立ててにやりと笑ってみせる。 だってめんどいじゃん、言い訳とか。 「家?座?」 「ごめいとう!だ。まぁ、ぬれただけでけがもないし。時宗丸もはんせいしてるしな」 見ろ、あの池に落ちても居ないのに雨に濡れた子犬のような姿を。 これをネタにして奴が大きくなったら散々からかってやろう。 主に合コンの席とかで。あるいは結婚式の友人代表スピーチで。 昔のことをいつまでも忘れず、大事な時にぶちまける。これが親戚クオリティ。 「はんせい、してる」 着替え中に突然時宗丸が言った。 えっらいシリアスな顔してどうしたんだ。子供の顔だと笑えますよ。 そして省略がわからないのに反省はわかるのか。 「ぼんさま!」 ん?なんだ? 「おれ、おおきくなったら、ぼんさまのけらいになる!」 こやつめハハハ! 何その話の流れぇー。意味わかんなぁーぃ。 人を池に突き落として反省したのち自ら家来に。 な ぜ だ 「おわび、と。ぼんさま、おこらないし。おれ、ぼんさますきだ」 ゴメン小十郎通訳してくれ。 こいつの言葉がわからない。 「池に突き落とした償い。加えて、ご寛大な梵天丸様に心酔したというところでしょうか」 工エエェェ(´д`)ェェエエ工 オレの従兄弟ってことは将来お偉いさんになるんでしょうが。 言っちゃなんだけど、オレってば若隠居する気満々よ?次の主は弟だってば。 小十郎も事情を知ってるんだから反対しろよ。 「ようございましたな、忠臣を得られて」 _, ,_ パーン ( ‘д‘) ⊂彡☆))Д´) ぜんぜんよくねーよ!! 下手に部下増やしたって面倒みきれません。 責任なんて取りたくない!無責任男のままでいさせて!! 「おれ、ぼんさまのいちのけらいだ!!」 「ははははは……一の家来はこの片倉小十郎景綱だ!!」 ……今、小十郎が時宗丸の頭に置いていた手から「ミシッ」とか言う音が聞こえたような気がするけど、気のせいだよね。 自重しろ小十郎。お前オレより10歳も年上なんだから。 そしてうやむやのうちに終了する一日。 NOと言えない日本人です……生きててすみません……。
|