梵天丸様珍しい拾いモノをなさる 後編



 ……大きいこと言っちゃったけど、別に難しいこと考えたわけじゃござんせん。

 大人を呼べなくて、なおかつ自分より重い相手を救出するとなると大した手を思いつかなかった。       
 梯子は重くて持てないが縄なら四駆の背に括り付けてもらえる。
 まあその程度の考えから発した作戦なのですよ。
 『スパイかもしれない子供救出大作戦』略してスパイ大作戦だ。
 

 「行動開始ー!」 

 
 1、一度戻って縄を取ってくる。

 もう行ってきました。

 なるべく長いのを、と言ったら五丈の縄を渡された。
 ここじゃなぜか曲尺使ってるので一丈が十尺で五十尺。
 一寸の虫にも五分の魂が3.03センチの虫にも1.5ミリの魂だから……覚え方に文句言うなよ。

 ………ちょwww15mwwww

 道理で重いと思ったわ。
 四駆と半分くらいずつ引っ張ってきたけど、それでもよくガキの手で運べたもんだ。
 やっぱり体力に補正かかってる?梵天丸どんだけ力持ちなのさ。テラスゴス


 2 縄の先に石をくくりつける。

 この縄は俺の手じゃ扱いづらいし、細かい作業には細めの紐のほうがいい。
 四駆は紐がなくても逃げない偉い子だから、犬の散歩紐を一度外して縄と結合し、そこに石を結び付けた。
 大きさ的にはまあオレの握り拳一個半ってとこ。大きすぎてもどうせ持ち上がらないからね。錘になりゃいい。

 「おおーい、何してんのー?」 
 「うっさい、黙って待ってろ!!」 

 ごそごそしてる俺を不審に思ったお子さんが話しかけてきたが、そんなもん無視だ無視。
 

 3、太い木の枝めがけて放り投げ、枝に絡ませる。

 フンフンフーン!西部劇気分だぜ!!
 さぁこれを縦に振り回しながら放り投げて……

 ―――失敗!

 ――――失敗!

 ―――――失敗!
 
 「ちょっとー?なんかカンカン音がするんだけどぉー!?」

 「ダマラッシャー!!」

 「丑の刻参りとかじゃないだろうね……」

 人の好意を無にするような発言禁止。



 ……ふー。



 「さぁ、この縄を使って登ってくるんだ!!」

 「うわ、ありがと!!ていうか何だか随分時間かかったみたいだけど一体何やってたの」

 それは秘密です。

 や、単に50回ぐらい失敗したんだけなんだけどね。
 でも今は全力で引っ張っても解けない程度にしっかり絡まってるよ。
 一応でっかい石を一周させた上で俺もこのお手製ロープを握ってますし。

 「縄だけで大丈夫か?」

 何なら一度引き上げて足場っつーか手をかける場所くらい作るけど。
 手先の器用さには定評のある梵天丸です。

 「あー余裕余裕。ちょっとどいててね!」

 なんか思ったより元気そうだな。
 これなら放っといても自力でなんとかしたかも。
 ともかくワクテカしながら待ってるぜ!


 +   +
  ∧_∧  + ワクワク
(0゜・∀・)  + テカテカ
 (0∪ ∪ +
 と__)__) +


 「あーやっと出られた」

 ……コイツ本当に腕の力だけで上ってきやがったよ。
 おまいは消防士か!
 
 いやそんなはずはない。子供だ。
 年齢は見たところ10歳前くらいな感じ。
 小十郎よりも随分年下に見えるが奴は老け顔だから参考にならん。

 しっかし本当に目立つ髪だな。
 伊達家の血筋も髪の色は薄いほうだけど、こいつはなんか次元が違う。
 染めてるわけじゃなかろうし、外国の血が入ってるとかか?
 
 「……あれー」

 なんすか

 「いや予想以上に、そのー…若かったモンで」

 「いくつぐらいだと思ってた?」

 「八つくらいかな。それでも大人びてるとは思ったけど、声が大分幼かったから」

 だって中身は大人だもーん。
 身体は子供!頭脳は大人!!
 
 バーローwwww現実になってもうれしくねーよwwww

 「残念ながら五つですが、なにか」

 まあ満年齢は4歳だがな。 

 「いや、特には。ともかくありがとう!分銅なんてよく考え付いたね」

 あーまぁね。筋肉○付という体力勝負な番組で見た気がするんだ。うろ覚えだが。

 「とりあえずお前は忍なら忍らしく忍べ」

 髪を隠すとかしろ。
 
 「え………」

 笑顔が固まった。
 あれ?俺って地雷踏んだ?

 「……見たところいいとこの坊ちゃんみたいだよね。なんで分かったの?」

 「状況と言動で」

 バレちゃヤバいなら分銅なんて専門用語は使うなよ。 
 ちなみに俺の身分に関しては、どうせ着てるものから知れるだろうと踏んで隠す気など毛頭ない。
 そのほうが牽制にもなる。
 
 「どこの手の者かセンサクしないから落ち着いたら帰れよー」

 「見逃すって?余裕だね」

 「ウチは当分動かないからな。今は外に出る気がない」

 領内でいろいろ事業を始めたりして忙しいし。
 殿様家臣領民と皆そろって面白がってるんだよね。何なんだこの伊達のノリのよさは。

 でも戦国時代だということを忘れたわけではないですよ。
 春から酪農の普及をはじめて、それと同時にその排泄物から火薬の材料を集める予定です。
 父上がインフラ整備よりもこっちに興味を示しちゃったから、小規模ながら手を出すことと相成りました。
 ありがとう浦○直樹、ディック・○ランシス。
 漫画と推理小説の知識がこんなところで役に立つとは予想だにせんかった。

 「そんなこと教えちゃっていいの?」

 動かないってことくらいなら。
 警戒は怠っていないしぃ〜うちにも探索部隊はいるもーん。
 奇襲するつもりでもちゃんと網は張ってあります。

 でもそこまでは教えてあげない。
 ま、さっきの君の質問にあえて答えるならば。

 「お前が面白いから」

 これでいかがでしょう?  

 「面白いって……若様はおかしな人だね」

 お前もおかしいよ。
 悠長にこんな子供とおしゃべりしてる忍者なんて聞いたことない。

 「ちょっと気に入ったわ。決まった主がいないなら仕事頼みたいなぁ。どお?」

 この辺の大名が忍を飼ってるって話は聞いたことないから、多分フリーの忍者だよね。
 
 「確かに今は特定の雇い主はいないけど……」

 やっぱし。
 こりゃ買いだ。   

 「依頼って直接?どっか経由しないとまずい?」
 
 「あ、うん、まぁ一応ね」

 ふむふむ。よっしゃ、目玉無くしたら護衛頼もうっと。
 母上に暗殺されたりしたらヤだし。

 「名前は」

 「言っちゃっていいのかなー……ま、いいか。佐助」

 「さすけ?」

 NA○UTOキタコレ。
 忍者にありがちな名前だわー。

 「そう。この仕事が終ったら猿飛佐助になるかな」

    。 。
   / / ポーン!
 ( Д )


 ( Д )  ......._。......_。 コロコロコロ…


 「さ」

 「さ?」


 猿飛佐助だとぉ!?

 真田十勇士じゃないの!
 ありえない!マジありえない!!

 いやいやこれは運が良かったと思うべきだぞ梵天丸。
 前言撤回だ。そのうちなんて言ってらんないぜこりゃ。
 一刻も早く味方に引き込んどかないと後が怖い。

 「佐助!」

 「はい?」

 三食賄い付き、昼寝は無理だが家賃ゼロで住み込み。
 給与は応相談だが昇給アリ、賞与年一くらいで。



 「オレんとこ来ないか!!」



 氣○団風にキメてみました。


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