梵天丸様認識をお改めになる昼飯食い終わったんでまったりと庭を見ながら茶を啜ってたら、北風が物凄い勢いで吹きつけてきた。 テラさみぃwww 俺が座ってるのは自室の前の庭に面した廊下なんだけどね、嫡子かつ長男の部屋だけあってこれが日当たり抜群なんだわ。多少気温が低くても気にならないくらいにね。 でも今日の風は日光と厚着程度じゃ無視できなかった。 何だこの寒さ!東北の冬は化け物か!! まだ秋ですけどー。 でもそろそろ紅葉も終りだ。 綾錦のごとく美しかった山も今はまだらに禿げてきてる。 今もって緑が茂ってるのは松の木くらいか?あ、椿なんかも常緑だっけか。山に椿があるのかどうか知らんけどさ。 松と言えばオレの部屋、つまりここから立派な松が見えるんだが、明日あたり庭師のおっちゃんが冬支度にくるそうだ。 なんだか筵を巻いたり支えをつけたりするらしい。 見てても怒られないようならちょっと見学させてほしいな。 枝を縄で吊るとか聞いたんだけどどうやって吊るんだろう。幹に固定するのか? しかしあの松の幹はちょっと頼りない気がするぞ。 なんだか発育不良っていうか、皮が剥げてんじゃねーか。 「……なぁ、小十郎」 思わず後ろに控えていた小十郎を呼んだ。 「何でございましょう梵天丸様。お茶をもう一杯お持ちいたしますか?」 うん、もう一杯ぐらいほしいかな。 オレの知ってる緑茶と微妙に違って抹茶っぽいがこれはこれで美味いわ。 でも今言いたいことはそれじゃねぇ。 「どうして松の幹が焦げてるんだ?」 枝じゃなくて、幹の真ん中辺り。 あの黒くなってるところは多分焼け焦げだと思うんだよな。 もしかして火事でもあったのか。 「それは殿がお庭で鍛錬をなさった折に傷つけてしまわれたのでございます」 うっそでぇー。 鍛錬って刀か槍か、百歩譲って弓くらいだろ。 それで木に傷つけるなら折れるか削れるか刺さるかぐらいしかねぇじゃん。 なのに焦げるって何だよ。摩擦熱か? 「いいえ、雷にございます」 ……ええと、頭大丈夫か。 確かに父上は強いらしいがそれでも人間だぞ。 宇宙から来た電撃鬼娘や黄色い電気ネズミじゃあるまいし、普通は人間に雷なんて起こせませんから。 それでもあえて雷が理由だとするなら、ぶん投げて松の木に刺さった刀に偶然落雷するとか? だったらまぁ理にかなってるかな。避雷針的な意味で。 「あれは一昨年のこと。ちょうどこの庭にて殿が新しくお手に入れられた刀で素振りをなされ……」 なんというマイペース。 オレの疑惑の視線をことごとく無視とは! そんなもっともらしいこと言って担ごうったってそうはいかねぇぜ。 現代の科学知識ってやつが俺に味方してるんだからな!! 平成の科学は世界一ィィィィイイイイ!! 「お疑いでしたら見せていただけばよろしいのでは?」 何をさ。 「雷を。梵天丸様のおねだりでしたら殿も喜んで松を根元から焼いてくださいましょう」 いや、別に松を焼いて欲しかったわけじゃないんだけど……って、ウッソーそれってマジィ? 比喩的表現じゃなしに、本気で雷落とせるのかYO! それなんてRPG? 「あーるぴーじ……?よく分かりませぬが真のことにございます。他国にも炎を操る者や氷を操る者がおりますれば」 ( ゚д゚) ( ゚д゚ ) せ…戦国時代……? 教科書に書いてない日本史。いやむしろ黒歴史のほうがしっくりくる。 ありえねぇ。ありえねぇよこんな現実。 コレはオレの常識の敗北を意味するのだろうか? 否、断じて否!! これは新しい世界の始まりなのだ! つまりこの世界はオレの知ってる戦国時代じゃないんだよ!そういうことにしておこうぜ!! もう武田信玄も上杉謙信もピンピンしてるしさ! ,j;;;;;j,. ---一、 ` ―--‐、_ l;;;;;; {;;;;;;ゝ T辷iフ i f'辷jァ !i;;;;; 人間は雷や炎や氷を操ったりはできない ヾ;;;ハ ノ .::!lリ;;r゛ `Z;i 〈.,_..,. ノ;;;;;;;;> そんなふうに考えていた時期が ,;ぇハ、 、_,.ー-、_',. ,f゙: Y;;f. 俺にもありました ~''戈ヽ `二´ r'´:::. `! > そのうちオレも口から火を吹いたりするようになるかもしれんな……。
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