梵天丸様無自覚に信望者を増やされる




 「佐助ーぇ」

 「は〜いはいはい」


 呼ばれた瞬間ひょいと顔を出したのは十歳前後の赤毛の子供。

 そう、未来の猿飛佐助少年です。

 一生懸命説得してうまいこと勧誘に成功したんですよ!
 甲賀忍者だけど里で修行したことがないそうで、師匠に許可もらってすぐに来てくださいました。
 ありがとう佐助君。うちは終身雇用制だから末永くよろしくね!

 俺が将来無事に隠居したとしても引退後に暗殺される可能性はあるわけだし、護衛はどうしても欲しかったんだ。
 忍者なんてまさに適役。基本的に暗殺する側なんだから、防ぎ方だって知ってるだろうしさ。
 しかもそれが猿飛佐助なら他国の力も削れて一石二鳥だぜ。

 小十郎も時宗丸も黒脛巾組も基本的には伊達家の家臣なんで、佐助はオレが初めて個人で持つ部下だ。
 宣言どおりに待遇はいいぞー!

 「何か御用ですかー若様」

 「おー。ちょっと仕事を頼みたくてな」
 
 そこで目を丸くすんなよ。
 
 オレが佐助を呼びつけてまで仕事頼むことってあんまないから、意外なのは分かるが。

 佐助は年齢のわりに利発なお子様だけど、10歳の子を馬車馬のように働かせるのは現代人として気が引けて……。
 労基法も児童福祉法もない世界って基準が分からなくてこえーよ。
 バイト的な扱いでいいの?シフト組む?勤務時間は?賃金相場も謎なんですけど!! 

 「お仕事ですか。若様の護衛以外に?」

 おっと、ほったらかしてゴメンね。

 そう。師匠について忍者の修行を積んだ君に、ぜひとも頼みたいのだよ。
 こうなると本当に佐助を拾っといてよかった。
 一部側近が不満タラタラだったが。小十郎とか小十郎とか小十郎がな。
 
 「黒脛巾に伊達領内と他国の情報を集めさせてるのは知ってるか」
 
 「知ってますよ。顔合わせした時に聞きました」

 うんうん。
 そこで、だ。

 「連中のこと鍛えてやってくんないかな」

 なにせ元々は領内の調査のために作り上げた組織だ。
 自分達で色々工夫してたみたいで気が付いたらなんとなく忍者っぽくなってたが、それでも専門職には敵うまい。
 だからさ、お前さんの素晴らしい技能を黒脛巾組の一同に伝授していただけませんかね。
 技術不足で死人がでたら命じる方としても寝覚めが悪いし。
 連中もやればできる子よ?

 「多分黒脛巾組よりお前のほうが忍としての能力は上だろうし」

 年が年なんで戦闘能力では微妙なとこだが、忍者としてなら佐助のほうが腕がいいでしょ。
 ここは一つ初歩の初歩から仕込んでやってはくれまいか。

 「あ、それはもう黒脛巾の頭領に頼まれました」
 
 
 Σ(゚Д゚; ナニィ!?


 ちょwww詳しくwww
 
 「梵天丸様のお役に立ちたいからだそうです」

 へーぇ意外。
 あの生真面目そうな頭領が自分の子供くらいの佐助に教えを請うたと。
 しかも自ら言い出して。  仕事に対するプライドから来てるとしても大した思い切りですな。

 ……そこで感動する前に裏にある何かを疑ってしまう辺りがオレです。

 「いや、別にそんな勘ぐることもないと思うけど……普通じゃないですか?」

 どこがだ。

 いくら世継ぎったってたかだか片手に収まる年のお子ちゃまよ?
 役に立ちたいだなんて、そんなご大層なこと言われるような実績もないのに。
 そりゃ何か他に理由があると考えるのが当然でしょうが。

 「若様直々の抜擢。重要な仕事を与えられて、お手当てまで取り計らってもらって、挙句名前まで賜ったって話ですが」

 ああ、そういや調子に乗ってコードネームつけたっけ。
 頭領の安部さんに『芭蕉』と……。
 だ、だって奥さんの実家が松尾って言うんだもん!
 だいたいその程度のことでそんなに恩に着られるとかえってこっちがいたたまれないよ。
 あの人引き立てたのは小十郎の助言で、仕事はどっちかってーと押し付けたようなもんだし、給料は出すのが当たり前だろ。

 「それだけ揃えば忠誠を誓うには十分だと思いますがね。そういやあの人、お許しいただければ息子に名前を継がせたいって言ってましたよ。どうでしょう」

 どうでしょうと言われても好きにすればとしか言いようが。
 子供の命名権は親にあるわけだし、親の名前を襲名するってのもこの時代じゃアリなんだろ。
 オレとしてはその息子とやらに相応の能力があるなら芭蕉の仕事を継ぐのは一向に構わないし、名前も同じだ。
 ただし息子が突然俳句に凝りだしてもオレは責任持たないからね。

 ……しかし名前ごときでそんな大事になるのか。 

 戦国時代テラコワス……(((( ;゚Д゚)))

 



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